アルパイン ブランドストーリーアルパイン ブランドストーリー
BRAND STORY
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革新
21

創造・情熱・挑戦
を受け継いで。

アルパインを創るエンジニアたち

2023.10.27

3人のエンジニアの根底にあるものとは。

 

その昔、会社でエンジニアが技術屋さんなどと呼ばれていた頃、そこには性格も考え方もよく似た同じようなタイプの人々が集まっていた。カーオーディオ創生期からモノづくりに奮闘してきた私たちアルパインにも、そんな時代があった。だが時代は進み、モノづくりの現場は、さまざまなタイプの人間が、それぞれの個性を自在に発揮する場になっている。

 

アルパインにおいてもその人材は、まさに百花繚乱。魅力的な個性を発揮しながら、考え方や性別、年代を超えて、その技能を花開かせている。しかしたとえ世代が変わり、技術が進歩しても、アルパインから発表される製品には、「アルパインらしい」と言われることがよくある。なぜ、そうなるのか。アルパインエンジニアの何が、そうさせているのか。今回のブランドストーリーは3人のエンジニアを通して、その根底にある流儀を探ってみる。

 

 

完璧に向かって挑み続ける、秋田紋子。

 

「なんで、これを見抜けなかったんだろう」。試作品の検証を終えて、回路技術部の秋田紋子は悔しがっていた。不具合がひとつ見つかったからだ。

 

エンジニアは設計の段階から、あらゆる方向からあらゆる可能性を考えて不具合が出ないように検討を重ねる。さらに試作の段階でも設計を練り直し、一次試作から回を重ねるごとに不具合は減っていく。それでも予期せぬ不具合が、突如出現する。もちろん試作の段階なのだから、これはむしろ当然のことであり良いことだ。それを改善するための試作という意味もあるからだ。だからこそ出現した不具合ひとつひとつを徹底して検証し、その原因と対策を綿密に練っていく。秋田は、その作業が決して嫌いではない。製品が完成に向かって進んでいる気がするからだ。

 

にもかかわらず、不具合が出るたびに、秋田の心の中には「悔しい」という気持ちが沸き起こる。

 

なぜならば秋田は、「想定外の不具合はない」という考え方を持っているからだ。想定外などなく、そもそも想定そのものが万全でないと考えている。だから「悔しい」と思い、「なぜ見抜けなかったんだ」と自分を振り返る。何百何千とある可能性の、さらにその枝葉の先にあるたったひとつの不具合。事前に見つけ出すのは、至難の業である。が、それを見つけ出すことが、秋田のエンジニアとしての挑戦だ。つまり技術も製品も、そして自分自身も、完璧に向かって挑んでいくことが好きなのだ。それが秋田紋子というエンジニアだ。

 

 

大友英里は、未来を創造する。

 

「これが、10年後の音です」。ある案件の関係者がずらりと並んだ会議室で、サウンド設計部の大友英里は和やかに未来を語っていた。

 

大友の重要な仕事のひとつに先行技術提案というものがある。5年後10年後に世の中に必要とされる、あるいは世の中を驚かす機能を提案するという仕事だ。もちろんベースとなるのは先進の最先端技術なのだが、そこで求められるのは、技術の内容以上に、その技術が未来の世の中に与える影響である。

 

ハイレゾ、ストリーミング、Wi-Fi、Bluetooth…音楽を聴くだけでも、次から次へと進化していく技術。どんなに画期的な技術もユーザーに必要とされなければ意味がない。逆に、当たり前の技術でも、新しい視点から提供することで世の中を驚かせることもある。要は、5年後、10年後に世の中がどうなっていて、ユーザーが何を求めているか、そしてそのためにどの技術をどのように使うのか、ということ。大友の思考のベースは技術的というより、文化的でさえある。大友というエンジニアは、まず今という地点にしっかりと立脚して、未来の音の世界を提案していく。そこにはいつも彼女ならではのイメージがある。会議の参加者たちは、そのイメージに共感し、提案に引きつけられるのだ。

 

もうひとつ、サウンドマイスターとしての大友も、いままさにその能力が花開いている。たとえばアルパインが誇るアルファード専用プレミアムサウンドパッケージのチューニングは、彼女によるものだ。アルファードという高級ミニバンの車内空間にふさわしい音を実現し、多くのお客様に支持されている。

 

また彼女自身、子育てやコロナ禍で現場に行けない時期が長くあったが、そのときの経験をサウンドマイスターという立場から客観的に見つめ、ひとつの研究を始めた。クルマの音場チューニングを、いまの時代にふさわしいスタイルで行えないかと考えたのである。音場という最も現場性の高い作業を、リモートで実施する。一昔前なら夢物語のような話だ。

 

アイデアは尽きることなく湧き出てくる。未来を創造する、それが大友英里の仕事だ。

 

 

千葉理恵の、今を掘り下げる情熱。

 

「みんなを満足させるのは無理なのだろうか」。ソフト技術部の千葉理恵は迷っていた。

 

ソフト技術部と言っても、千葉が実際にソフトウエアのプログラムを作ることはない。今の千葉の仕事は、製品要件管理、製品製作の仕様書づくりだ。つまり、ソフトウエア開発の道標を描くのが千葉の仕事である。だからこそ千葉は、製品のディティールから全体像まで眼を向けていくことになる。

 

アルパインの製品は、世界各国で生産され、世界各国に出荷される。ユーザーは世界中にいる。そして、世界にはさまざまな人々がいる。そのひとりひとり総ての人の好みに合わせることはできなくても、もっと、地域ごとのユーザーに寄り添うことはできないのか。特に海外向けの製品を担当する時、千葉はそう思うことが多い。

 

海外と一言で言っても、国や地域によって音や操作の好みは異なる。それを一機種で対応しようとすると、やはりどこかで妥協しなければならなくなる。千葉は、それを妥協ではなく、みんなが満足するものを作り出せないかと、もう一歩先を考える。ひたすら寡黙に、音、配色、デザイン、仕様にまで千葉の思いは至る。

 

千葉はそのために、その地域の人を知りたいと思う。地域の人の好み、暮らし、考え方。できれば共に生活して、今、本当に彼らが欲しいものを知りたいとさえ思っている。世界を知るということは、今を知るということなのだ。そのこだわりに千葉は情熱を向ける。

 

いまの時代は短い時間で、どんどんモデルチェンジが進んでいく。だからこそ、ひとつひとつのモデルチェンジに世界中の今を反映したいと思う。モデルチェンジは、チャレンジの機会。それが千葉理恵の考え方だ。

 

 

アルパインらしさが、製品に宿る理由。

 

ここで語られた3人のストーリーは、それぞれが違う内容の話だ。ただし三人三様に、人としても、エンジニアとしても多面性と深さを持っている。

 

秋田紋子の挑戦は、常に慎重でありながら、しかし大胆である。
大友英里の想像は、現実を見据えたところから始まる。
千葉理恵の情熱は、むしろ静かさの中に潜んでいる。

 

創造・情熱・挑戦。アルパインのDNAを表す言葉として、ずっと以前から語られてきた。そこにアルパインの意思がある。それは、この3人にも確かに受け継がれている。もちろん他の人々にも…。創造・情熱・挑戦のもとに生まれたものだから、いつのアルパインにも、どのアルパイン製品にも、アルパインらしさが宿っているのである。